筋ジストロフィー患者におけるインフルエンザの予防と治療について
専門医へのアンケート結果

厚生労働省から、「タミフル使用の安全対策として10歳以上の未成年者へのタミフル の使用は原則控える」とう通知が出たという記憶もまだ新しいのですが、今年もイン フルエンザ予防接種の声も聞かれる季節になりました。10歳以上の小児筋ジストロ フィー患者は、呼吸器感染症のリスクが高く、一方自力での移動は困難という特殊な 状況にあります。一般の方とは違った配慮が必要であると考えます。当研究班では全 国の筋ジストロフィー医療を担当している専門医の先生方にアンケートを行いまし た。22名の先生から回答がありました。参考になることが多いと思いますので、私の コメントを添えながら、結果をここに掲載いたします。
2007.10.2
筋ジス臨床研究班 主任研究者
国立病院機構東埼玉病院 川井充

Q 筋ジストロフィー患者に対して予防接種を勧めていますか?
A 全員が勧めていると回答されました。
インフルエンザの予防接種は罹患を完全に予防することはできませんが、罹患率をさげ、 症状を軽減することが期待されますので、やはり実施した方がよいでしょう。
Q 患者の家族に対して予防接種を勧めていますか?
A 13人が勧めている、8人が勧めていないと回答されました。筋ジスとフィー医療経 験年数による違いをみると、10年以上の先生方では8人が勧めている、2人が勧めてい ないと回答されたのに対して、10年未満の先生方では5人が勧めている、6人が勧めて いないと回答されました。
車椅子を使用し、外出時に電車のつり革や券売機のボタン、エスカレータの手すり など他人のさわるものに触れるチャンスの少ない患者、特に人の大勢いるところに外 出する機会の少ない患者では、主たる感染源が家族になることが多いことを考える と、家族が罹患しにくい方が望ましいと考える先生が多いと思われます。なお、家族 には手洗いとうがい(とくに手洗い)の励行を指導する必要があるでしょう。
Q タミフル使用の安全対策として、10歳以上の未成年者へのタミフルの使用は、原則控 えることとされています。この年齢の筋ジストロフィー患者に対するタミフルの処方 に対する先生のお考えをお聞かせください。
A 自力で移動できる場合、2人が処方する、12人が処方しない、7人が場合によると回答 されました。
半分以上の先生が処方しないと回答し、場合によって処方すると回答された先生 も、呼吸機能の低下から重症になりやすいというリスクと異常行動による危険性を比 べた上で、慎重に保護者に同意を得るというお答えであると理解されます。吸入がで きればリレンザを使うというのもよいと思われます。
A 自力で移動できない場合、12人が処方する、4人が処方しない、5人が場合によると回 答されました。
やはり、高所よりの飛び降りなど危険な異常行動のリスクと、インフルエンザにより 重症になったときの危険性を比較した結果であろうと思います。それでも、電動車椅 子使用時の危険性、人工呼吸器装着患者の場合はカニューレ自己抜去など危険な行動 を行なう可能性を考慮する必要があるでしょう。やはりインフォームドコンセントが 重要であることはいうまでもありません。